8月30日付読売新聞の入管ハンストを報道する記事について

読売新聞朝刊39面(社会面)の、連載四コマ漫画コボちゃん」の下に位置するあたりに、牛久入管のハンガーストライキ*1についての記事が掲載されていた。
http://f.hatena.ne.jp/quagma/20120830075600
まずは、このようなことが起きていることを報道する記事が、紙面でも比較的目立つ位置にそれなりの大きさで掲載される、ということ自体は、よいことだと思う。
 
しかし「難民認定長期化 抗議か」という見出しは何なのか。
これではまるで、被収容者が抗議しているのは直接には「難民認定手続きの長期化」であり、その迅速化を訴えているだけのように見えてしまう。
しかし実際の問題はそんなところにはなく、長期収容そのもの、そしてそこにおいて起こる様々な人権侵害が問われているのである*2
記事の文面を読めば、入所者が「長期収容をやめてほしい」と訴えた、と正しく書かれているのだが、この見出しと併せて読むと、収容の長期化が「難民認定手続きの長期化」という「仕方のないもの」と見えなくもない理由によって引き起こされているように読めてしまう。
この見出しは、(巧妙にも?)被収容者の訴えを曖昧化し、誤った理解に導くものになってしまっている。
 
また、「難民認定手続きが長引くなどの理由で同センターに長期間留め置かれている…」という文面も、完全な虚偽とまではいえないものの、事態を正確に記述することを回避するものなのではないか。
実際には難民認定手続きの遅滞によって収容が長期化しているのではない(すくなくとも主要な理由はそれではない)*3。また、収容されている人で、難民認定手続きをしておらず難民認定されることを望んでいるわけでもない人も多くいるはずである。
これもまた、読む者を誤った理解に導くものになってしまっていると言えるだろう。
 
このような記事になったのが、あえてミスリードを狙ったものか、単に記者の理解不足によるものかは、わからない。
しかし、いずれであれ、この記事が、かえって入管の収容所の人権侵害的な実態という問題を覆い隠すものとなってしまっているのは事実だ。
残念なことである。

*1:くわしくはこちらhttp://praj-praj.blogspot.jp/2012/08/blog-post_21.html参照

*2:こちらhttp://praj-praj.blogspot.jp/2012/08/blog-post_21.htmlの資料1「東日本センター被収容者の要求書」参照

*3:仮放免者の会(PRAJ) のブログhttp://praj-praj.blogspot.jp/の過去記事を読めばそのことは理解できる