カナダの入管収容施設

昨日の記事でも触れた、関東弁護士会連合会・編『外国人の人権―外国人の直面する困難の解決を目指して―』(明石書店、2012)という本に収録されていた「カナダの入管収容施設見学記」と題されたコラム*1が、なかなか興味深かったので、まるごと引用したい。

 筆者は、2012年5月15日に、カナダ・オンタリオ州の州都トロント郊外にある Toronto Immigration Holding Centre を見学した。同施設では、入管および難民保護法(Immigration and Refugee Protection Act, IRPA)に基づいて身体拘束された外国人が、Canada Border Services Agency の管理の下に生活している。
 食事は、朝昼晩の3食の他、夕食後のスナック&ドリンクも用意される。また、被収容者のための図書室やチャペルもあり、祈り等の宗教活動を行うための集まりも許可されるとのことであった。運動エリアは、フェンスに囲まれてはいるが広いスペースが確保されており、バスケットボールのゴールなどが備え付けられていた。ここで、被収容者は1日2回、天候が許す限り、毎日運動できると説明を受けた。
 施設内のクリニックには、看護師が毎日詰めており、医師は週2回勤務するとのことであった。被収容者が医療サービスを求める場合は、収容スペースに備え付けられているリクエスト・フォームに記入して提出する。収容施設の担当者の説明によれば、被収容者が医師の診察を不必要に待たされることはなく、専門医の治療が必要な場合には、警備員を付けて外部の病院に運ぶシステムになっているとのこと。なお、2012年5月時点で、外部診療の費用は、Interim Federal Health Program(IFHP)を通じて公費負担がなされているとのことであった。
 見学者を非常に複雑な心境に誘ったのは、家族の収容エリア(母親と子どものための収容スペース。成人男性の被収容者は入ることができない)の存在であった。大小のおもちゃ類が散乱するプレイルームと、ダイニングスペース(ダイニング・テーブルのセットが4〜5個)は、被収容者が自由に行き来をできるようになっており、格子がはまっているとはいえ、明るい日差しが差し込む窓に可愛らしいカーテンが掛かっていた。子どもたちが元気に声を上げながら、部屋べやを駆け回っている。ただ、未成年者の収容の当否を考えるとき、問題は非常に複雑である。
 同施設の見学で非常に感銘を受けたのは、収容施設内にNGOのためのオフィスが用意されていたことであった。このオフィスには、Canadian Red Cross(カナダ赤十字)や The Toronto Refugee Affairs Council(TRAC)などのNGOスタッフが待機して被収容者のニーズに応えており、難民法律事務所(The Refugee Law Office)のスタッフも、週2日、このオフィスに詰めているとのことであった。このように、被収容者が、法律家を含む外部の専門家に助けを求めやすい環境が存在していることは、日本でも見倣うことができる点ではないだろうか。


いかが思われるだろうか。
こちらhttp://big-papa.hatenablog.com/で見られるような日本の同種施設と比べつつ読んでみるとなおいっそう興味深いことと思う。

*1:巻頭のシンポジウム委員会委員名簿、巻末の執筆者一覧によれば、同コラムを執筆したのは横浜弁護士会所属の駒井途知会弁護士である。