『乱暴と待機』

 
きょう見てきた。
詰まらなくはないし、これはいいと思うところもあったんだけど、どうも美波の演じるナナセという女がなー…
嫌われることを極端に恐れている(そのため山田孝之の演ずるいやらしい隣家の夫に迫られると断れずに性交に応じてしまう)という神経症的な役柄なんだけど、こういうキャラクターが映画の中心に近いところに居すわっていると、映画がどんよりするので、だいたいはいいことないと思う。
 
登場人物はほとんど四人しかいない。先に挙げた山田、美波のほかに小池栄子浅野忠信。この二人はよかった。
小池が演じる妊婦(高校時代に彼氏を美波にとられたため激しく恨んでおり、今また夫山田をとられはしまいかとを恐れている)はことあるごとに目を剥き三白眼ですごむ。それだけでなくかなりの勢いで暴れ周り破壊の限りを尽くす。もっとやれと思った。
浅野忠信はいかにも正体不明の不気味な人物として姿を現し、そして最後までわけの分からん奴で、はっきり言ってモンスターというほかないのだけれど、微妙に人間くさい。共感してしまいそうになるシーンもあった。しかし最終的にはやはり理解を絶している。そこが痛快であった。美波の役みたいに中途半端に共感できそうな人物よりこういうモンスターのほうが映画的にはずっと面白い。
 
山田は無気力なくせに手だけは早い嫌な男(しかし凡人)をよく演じていて好感が持てた。
美波は、、、、ごめんどーしても好きになれなかった。でも悪いのはたぶん彼女じゃない。原作の小説家か、脚本家か、監督か、あるいはその全員が悪い。
 
全くリッチなところのない、貧乏くさいロケ(セット?)を舞台にしょーもない(あまり真に受ける気にはなれない)物語が進行する。しかしこの映画は仏壇とちゃぶ台と二段ベッドの四畳半でもスペクタクルは成立する、ということを立証したと思う(ボードゲームのシーンは必見)。
 
こう書いてみると、書き始めたときよりはいい映画を見た気になってきたので、映画の感想を書くというのもなかなか悪くないじゃないかと思いました。