「ココロ、オドル。」

2004年作品、監督:黒沢清、主演:浅野忠信
 
(その3まである。現時点ですべて視聴可能である)
 
雑誌『Invitation』の企画(宝酒造株式会社協賛で、同社の焼酎を画面に登場させている)で、同誌にDVDとして同封されていた20分強の短編作品。特殊な機会を除けば劇場で一般向けに上映されたことはなかったはず。
私は雑誌を購入してDVDを持っていたが、引っ越してからどこに紛れ込んでしまったか分からなくなってしまった。
ユーチュ−ブにアップされているのを発見して驚いた。
 
改めて見て、なんとも奇妙な感触の作品だと再認識した。
 
台詞がなく字幕付きで画面作りもトーキー以前のサイレント映画ふうではあるが、音が重要な役割を果たしてもいて、加えてカラー作品でもあるから、オタク的にサイレント映画っぽく作り込むことに固執しているわけでもなさそう。それどころか、撮影はデジタルヴィデオカメラを使用しているという点でごく現代的ですらある。しかしスクリーンプロセスという古風な技術を活用してもいる。
いかにも予算のない学生映画風である一方で、どことなく西部劇のような古典的な風格を備えているようでもある。
字幕により一応の説明はなされているが、いったいどのような内容が物語られているのか不明瞭なところも多い。ほとんどの画面がロングショットであり、個々の登場人物の明確な描写を欠いている。神話的とでも言いたくなるような、近づきがたく、異国風で、かつ懐かしい語り口。
 
流れ去ってゆく風景をバックに人物をバストサイズで捉えた画面は、「心躍る」というよりも、胸が騒ぐ感じだ。